氷河を知ろう Glacier



アルプスへ行くと先ず、麓の町まで迫っている氷河の迫力に圧倒されます。次にその大自然の驚異に感動します。
山と山の間の谷という谷を埋め尽くすこの氷河は、観光客にとっては美しいものですが、登山者にとっては恐ろしいものでもあります。それは氷河が絶えず動いており、そこにできたクレバスが人を呑みこんでしまうからです。日本ではあまり馴染みがなく想像しづらいかもしれませんね。この自然が作り出した氷の創造物はどんな構成をしているのでしょうか。

標高2600mから3000m以上になると、たいてい雨や雪の降水は固体になり、降った雪は融けずに更にその上にまた雪が積もります。こうして積もった雪は万年雪となり、積もった上の層の圧力で下層部は氷へと変わっていきます。そしてこの氷は傾斜によって前進しはじめます。
ここで上記の雪田部分と氷河上部の間に発生した割れ目、氷河部分と山岸の境にできる割れ目をリメ・rymaye(仏語)、またはベルクシュントといいます。
前進する時に、傾斜が変わったり、曲がったりと地形によって抵抗や歪みが生じたり、中央の早く動く部分と、両岸に接しているため遅く動く部分との差が出ることによってクレバス・crevasse(仏語)が生まれます。
傾斜が急になり氷河の圧力によって砕けてしまった氷の塊をセラック・séracs(仏語)、塔状氷塊といいます。
そして標高の引い方へと押し流された氷河は気温が上がることにより融け始め、表面に水が溜まり、やがてそれが小川になります。
表面を流れてくる水が垂直な縦穴のクレバスの中に落ち、滝のようになります。そして氷河底部の急流と合流します。これをムーラン・moulin(仏語)といい、モン・ブラン山群にあるメール・ドゥ・グラスのそれは有名です。
氷河が運ぶのは氷だけではなく、前進によって削られた岩や、土砂の堆積がモレーン・moraineで、細長くのびた氷河の先端部分に見られます。

ここ近年の温暖化の影響で氷河も徐々に後退しています。例えばボソン氷河 Glacier des Bossons は1982年からは800m後退したといいます。

朝、氷河に陽が当たり始めると「グゥグゥ」というような音が聞こえます。それは内部で氷が軋んでいるからで、氷河の「泣き声」とでも言うのでしょうか。そんな時は、映画のシーンのように自分の足元がパックリ割れてクレバスとなって呑み込まれてしまうのではないかというように想像したりもしまいます。
氷河を歩く時は、このクレバス、そしてヒドゥン・クレバス(クレバスの上を積雪が覆い隠してしまうこと)、などに充分注意しなければなりません。
充分な知識と技術があれば、氷の芸術である氷河を歩くのは楽しいものです。

◆メール・ドゥ・グラス Mer de Glace (モンブラン山群 Massif du Mont Blanc)◆
フランスでは1番、ヨーロッパ・アルプスで3番目の規模。長さ12km、標高差2500m。
深さは傾斜が緩いところでは約200mから400m、急なところでは約40m。1日に約10cmほど前進する。クレバスの深さは平均で30mから40m、深い所では50mに達する。
オージャイブという条痕模様が氷河表面に出ている。
口を開けるクレバス ムーラン



 





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送