今宵の山探訪 Livres

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line 山に行けない時、もっと山について知りたくなった時は、山に関する本を読んで山へワープ。行ったことのない山についてや自分ではできないような登攀記録を読んでは感嘆したり、山のエッセイや登山家の自伝に共感する・・・ここでは私が夜長に読んだ山に関する本の感想と雑記をリストアップしてみました(あまりポリシーはなく、手に入る本や話題の本を読んでます)。これからも増やしていきますのでぜひお勧めの山の本がありましたらメールで教えてください。
さあ、今宵はどの1冊にしましょうか。
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日本人著者

★登山家山野井泰史氏のクライミング半生
「垂直の記憶」
(山野井泰史著、2004年4月15日初版発行、山と渓谷社)
著者のヒマラヤとカラコルムでの登攀を7章に分けて語っており、それぞれの章から彼の山に対する情熱がほとばしっている。極限状態での登攀と冷静な心理描写が相まって臨場感があり、最後まで一気に読んでしまった。
自分が情熱を注ぎ込めるものを見つけ、ここまで命をかけて追求できる彼は幸せだと思うし、彼ほど生きることと登ることが表裏一体の登山家はいないのかもしれないと思う。
通常こうした登攀記録を読むと、自分とは別世界の人だとの印象を持つが、普段の生活や家族のことを語ったコラムによってとても親近感が持てた。


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★女性初のヨーロッパ3大北壁登攀までの登山歴
「私の北壁」
(今井通子著、昭和57年10月20日初版発行、朝日新聞社)
医師にして登山家でもある今井氏が日本のトップ・クライマーへと登りつめていく過程が彼女の率直な文章で綴られている。家族の心配、女性登山家への軽視、女性としての体力的ハンデ、困難な岩場への挑戦、こうした苦労、困難を乗り越えてのヨーロッパ・アルプスへの遠征。今でこそ登山道具は改良され進歩し、海外の情報も簡単に手に入る時代ですが、当時のことを考えると何とパイオニアワークであったんだろうと感嘆してしまいます。著者のたゆまない努力と強い意志力には、特に同じ女性としてただただ感服です。
著者をモデルにした新田次郎著「銀嶺の人」と合わせて読むとさらに楽しめます。


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★山に逝ったクライマーたちへ生と死とロマンチシズムを解く
「みんな山が大好きだった」
(山際淳司著、1995年7月18日初版発行、中公文庫)
本の中で著者は数々のクライマーたちの生き様を取り上げている。あまり登山史や登山家のことに詳しくなかった私にとっては、それぞれの個性的な登山家たちの山に対する情熱が新鮮だった。それは著者の彼らの世界に対する深い理解と愛情溢れる文章によるものだと思う。
書中にある「山での苦行は貴重だ」とか「山頂に立ったときに降り注ぐ陽光は自然の祝福だ」など、心に残る言葉も多い。
そして読み終えた後には「みんな山が大好きだった」んだと静かに感動できる。


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★焚火と自然を愛してやまないシーナ探検隊のアウトドア・エッセイ
「ハーケンと夏みかん」
(椎名誠著、1991年3月25日初版発行、集英社文庫)
各エピソードがほのぼのしていて、天泊での夜に気軽に肩の力を抜いて読める1冊。ご存知シーナ流言語と比喩表現が駆使された過去の体験談。悪友沢野ひとし氏に誘われて学校をサボり岩登りに行く話、冬山天幕ドタバタ劇、奥様との心温まる山登りなど、氏の山登り事始記。


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★巨匠が描く長編山岳小説
「氷壁」
(井上靖著、1963年11月初版発行、新潮社)
この本も読みたかった1冊。
偶然にも本屋で仏訳本を発見。題名も「Paroi de glace」と原題通り。
強烈に感じたのは、山という大自然ではたった一つの真実も、都会という俗世間ではそれがいくつもの憶測となるということ、万華鏡のように屈折もしてしまう・・・。
これを根源として巨匠はいろいろな対峙によってそれぞれを際立たせている。自然(山)と都会、男と女、上司と部下、年いった夫と若い妻、メディアと個人、麻のザイルとナイロン・ザイル、etc
さすがに氏の著だけあって細かい心理描写や緻密な文章、骨太な話の骨子は読み応えがあった。
小説としてはめずらしくここには悪役がいない。一人一人が魅力的な人物として描かれており、それぞれが自分の信念に忠実だ。だから結末にも納得ができ悲壮感はない。
特に私が気に入った箇所は、冒頭に山から主人公が帰ってきたが都会の雑踏に違和感を覚え、すぐに順応できないシーン。そして小説の中で唯一光明を与えている山案内人の上条氏たちの献身的な協力とやさしさだ。

ところで小説の途中に出てくるロジェ・デュプラ Roger Duplatの詩「もしかある日」が印象的だった。リヨン出身のこのアルピニストは1951年にヒマラヤのナンダ・デヴィで消息を絶っている。その後ラングパンが著書「ヒマラヤ、残酷な情熱」(Himalaya, passion cruelle)の中で詩を取り上げている。デュプラに関しては上記の「みんな山が大好きだった」でも取り上げられている。

この詩のように、ケルンに2つのピッケルを差すのはやはりカオルなのだろうか。


外国人著者

★登山文学の古典中の古典
「アルプス登攀記 上下」
(エドワード・ウィンパー著、1936年5月10日初版発行、岩波文庫)
ウィンパーといえばマッターホルン初登攀者として、そして下山中に起きた悲劇があまりにも有名。しかしマッターホルン登攀だけではなく、彼の登山記録はアルプス全体に及んでいる。
この本では彼の一石一草にわたる鋭い観察眼で語られる登山記録だけでなく、その当時の登山スタイルやアルプスでの暮らしも知ることができる貴重な1冊だ。本の中には木版挿絵画家だった彼自身による挿絵も楽しめる。
少々退屈な章もあるが、彼の紆余曲折、波乱万丈の山への情熱が十二分に語られている。ただ地図が添付されていないので、地名に馴染みがないと書かれているルートが想像し難いかもしれない。
ちなみに「アンデス登攀記」も出版されている。


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★世界最高峰で起きた大惨事の記録、リアリティあるノンフィクション
「エヴェレストの悲劇」
邦題「空へ−エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか」

(ジョン・クラカワー著、1998年3月初版発行、Press de la Cité)
1996年にエヴェレストで起こった大量遭難事故を、記者として営業公募隊に参加し生還した著者が、参加者たちからの綿密ななインタヴューを経て客観的に描いた登山ドキュメンタリー。
営業公募隊が編成される過程、現地での状況、人間模様、高所順応化、登攀、天候の急変、遭難、死に向かっていく登山者・・・と、日にち・時間を追って記され、実際に著者が体験したことであるから余計に重みが増してくる。
この本を読むとエヴェレストのイメージが違ってくる。それは高額の参加費用を払って世界最高峰を手に入れるという事実、公募登山隊であるから見ず知らずの人ともザイルを組む、衛星携帯電話にFAX・パソコン、有能ガイドへの安全の依存、シェルパのお膳立てとフィックス・ザイルの使用・・・。
すべてが整った中で、身一つで登りさえすればいい、というある意味エヴェレストが商品化されているような気さえしてしまう。
所々に著者の印象であって事実と違うのではないかと疑うような箇所も無きにしも非ずですが、ここに書かれていることがすべて本当に客観的事実だという前提で読めば、自然に立ち向かう厳しさと深い悲しみが胸を打つ。
書中で著者が批判していたロシア人ガイド、ブクレーエフの「デスゾーン8848m」も読みたいと思っている。


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★山の詩人ガストン・レビュファの代表作
「星と嵐」
邦題「星と嵐−6つの北壁登行」

(ガストン・レビュファ著、1954年初版発行)
さあ、フランスの偉大なる登山家にして名ガイドのレビュファの登場です。彼は登山分野での活躍ばかりではなく、著作、映画制作でもその才能を発揮した人でした。有名なフランスのヒマラヤ遠征隊、人類初の8000m峰アンナプルナから戻ってこの本は執筆されました。6つの北壁とは、3大北壁のグランド・ジョラス、マッターホルン、アイガーとドリュ、ピッツ・バディレ、チマ・グランデ・ディ・ラヴァレドのことです。
この中で彼が語っているのは6北壁を征服した記録の羅列ではなく、初征服者への畏敬の念や、ザイルで結ばれたパートナーとの友情など、人間愛なのです。それとともに彼の職業に対する誇りと、山への限りないオマージュが本当に感性溢れる美しい文体で表されている。私はいっぺんで彼の詩的表現のとりこになってしまった。そこには名声を得ていても奢りなどは微塵も感じず、ただただ山への愛着と、山に登れる喜びがあり、彼の冷静な判断力と困難に立ち向かうファイトに引き付けられるのです。
どのように訳されているか是非翻訳本を読んでみたいものです。










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