ダールのコル Col des Dards (2800m)


2月28日 曇り&吹雪


エギュイーユ・ルージュ(赤い針峰群)での山スキー。またしてもロープウェイを利用するので簡単2000m近くまでアクセスが簡単。夏の登山ルートとして人気のラック・ブラン(白い湖)の頭上にあるダールのコルを目指します。天気さえ良ければこの山群を縦走するのも可能でしょうが、この日は最悪の天気で視界も最悪。こういった日は雪や雪崩の状況をよく調べてから出かけましょう。

出発地点標高 アンデックス Index 2385m
到着地点標高 ダールのコル Col des Dards 2800m
標高差 登り 415m + 約150m  滑走 約900m + 約150m
地図 IGN 3630 OT








天気予報では今日からの天気は雪で太陽も出ないらしい。がっかりだ。そうなると行けるルートも限られてくる。という訳で、夏に何度も行ったことのあるアンデックス〜ラック・ブランのコースに決まった。

朝一番のレ・プラから出るフレジェール行きのロープウェイに乗ろうと9時前には乗り場に行くが、もうそこにはスキーヤーやらスノーボーダーやら長い列が出来ていた。30分近く待っただろうか、ようやく乗り込むことができたが、地下鉄並みの混雑。耳を澄ますとフランス語、英語、ドイツ語、スウェーデン語と狭い箱の中はインターナショナル。麓からフレジェールまで標高約800mを一気に10分弱で上がる。

あまりにも寒いため、シールをザックから取り出してパンツの中にいれお腹で温める。それでなくても着込んでるのでお腹は膨れパンパン。高度計もしっかり調整して出発準備ができた。

国境の長いトンネル、じゃないロープウェイ駅を出ると、そこは真っ白だった。

駅を出たところで支度をするスキーヤーたち
真っ白であった、しかも風が強い
命綱のビーコン作動も確認
お腹にはシールやらビーコンやら、ポケットには行動食やらで着膨れ

もう1本スキーリフトを乗り継いで、アンデックスまで上がる。リフトに乗って風を切っているときが一番寒さを感じる時かもしれない。そういえばロープウェイ乗り場の掲示板にフレジェールで-18度と書いてあったので、更に上がったここアンデックスはもう少し低いだろう。

先ずは降りたら右手の坂を少し下り、シールを装着。がしかし、寒さと風で素手ではできないし、シールを貼るすがら板に雪が舞い降りてくるのでそれを取り払いながらと、なかなか手早く出来ない。お腹で暖めといたとはいえ、貼ったシールを素手で擦れないため、登行時に剥がれないかちょっと心配。

雪はアイスバーン。針峰群の山腹を登ったり下ったりトラバース。斜度があるところではしっかりエッジを効かせないと300m位は平気で滑落しそうなので慎重に通る。
途中クロシュのコル Col des Aig. Crochues (下の写真中央部)を目指して登行するグループもいた。

このようにトラバースして
この尾根を越え反対側へ

尾根を越えて滑走したらここでまたシール装着。各人間隔をあけてるし、寒いしで誰もほとんど口を利かない。さらに登行を開始するが、ここはかなりのラッセルで、6人が順番に先頭を交代する。
ジグザグに登るが雪が深いし急傾斜なのでコンヴァージョンするのも次第に億劫になってくる。しかも越えても越えても小さなピークが現れて、がっかりさせられる。鼻の中は凍ってるし、口で息をしているので首・口まわりのネックウォーマーもバリバリに凍り冷たい。いくつめの小ピークを越えたころだったろうか、見慣れた針峰のシルエットが目の前に広がった。ようやくコルが見えたのだ。

視界がきかないので後続が来てるかにも気をつける
チームワーク重要です
極寒の中シールを装着
コルが見えた

風は益々強く立ち止まって飛ばされないよう身構えてしまうほど。コルに到着してその脇の岩場の影でシールをはがし、休むものの、途端に体の末端から冷えてくる。私以外のみんなはもう鼻が白くなり始めているので、つまんでグルグル回して凍傷防止している(う〜ん、私は必要なかった、やはり高さの問題か)。
もう1時にもなりお腹がすいているが、長いこと立ち止まって昼食を食べているどころではない。行動食の乾燥フルーツやチョコを食べて済ませる。メンバーの一人がテルモスに入れた甘くて熱〜い紅茶を1杯くれたお陰で少し生き返った。私の水筒の水は凍っていて飲めなかったから。
この10分ほどの休憩でもみんなが我慢したのは(といっても他に休む場所なんか無いのだが)、このあとは気持ちいいパウダーランの滑走がまっているからだったのだが・・・。

ここのコルから標高で約500m下のラック・ブラン(白い湖)までは全くシュプールが無くパウダースノーで本当に気持ちがいい斜面だった。これで展望さえあれば言うこと無しなのだが。ラック・ブランの上まで来たところでストップ。湖はもちろん一面雪に覆われているが、果たして湖上を滑走していいものか・・・。とよーく見ると今日ではないと思われるがうっすらとスキー跡がうかがえたので、迷わず私達もトレースをたどり湖上を縦断する。

湖脇に建つラック・ブラン小屋はもちろん営業はしていない。夏だとこの小屋の脇からアルジャンティエールに向けて登山道が降りているが、もう今ではホワイトアウト状態なのでこのルートを滑り降りるのは危険だと思われた。それよりかは出発地点のフレジェールに下ったほうがルートがはっきりしている。がみんなは行く気満々。
のっけから急斜面で狭いクラスト斜面、しかも一気に下れるのではなく岩場のせいか地形のせいで斜面は平らではなく起伏が激しい。50m降りては10m登り、またトラバースしては登ったり降りたり。とうとう雪庇上にでてしまい降りられないし、周りのルートも判別できない状況になってしまった。はっきりいってルートを見失ったのだ。
ルートを探して降り続けるか、風が私達のトレースを掻き消さないうちにラック・ブラン小屋に戻るか。このホワイトアウトでは捜査のヘリも来てくれないのは分かっているので、潔く戻ることに決める。
この時点で私は相当疲れていたので、小屋からここまでの急斜面を登り直すのかと思うと正直言ってうんざりした。急いでシールを貼り、スキーアイゼンを装着して空腹の体に鞭打って引き返し始めた。
まるで八甲田山の雪中軍行だと思ったのはもちろん私だけだろう。

ラック・ブランまでの滑走中はこれくらいは視界があったが・・
引き返しを決めた地点では視界は更に悪かった

ようやくラック・ブラン小屋まで引き返せた。小屋脇で風をよけシールとスキーアイゼンをはずし、そしてすぐまたフレジェールに向け滑走に入る。はじめデブリ状だった雪は途中でアイスバーンに変わり、気が抜けなかった。が遠くにフレジェールのリフトが見えたときにはみんなの滑走スピードが5km/hは上がったと思う。そこからは一気に降り、スキーゲレンデを通過してロープウェイ駅に至るにあたっては、電光石火。駅ではみんな無言で板をはずし、4時の下りロープウェイに乗るべく列に並んだのでした。

【後記】
宿に戻ってまだ凍っていたサンドイッチを食べたが、さすがに寒くてビールは飲めなかった。
悪天候だと展望もない、昼食も止まって取れないし、寒さのせいでビールも欲しないと3重苦だ。しかも体を暖める温泉もない。平常体温が37度ある欧米人と違って私は体温低いんだよね。
でも逆にこんな悪天候でも山スキーでは山を楽しめる(楽しめたかどうかは別だが)ものなのだと分かった。
私は山スキーに関しては初心者〜初級者だったが、こういう軍行じゃない、山行に連れて行かれたせいでちょっとレベルアップしたように思う。



 





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