プティット・エギュイーユ・ヴェルト Petite Aiguille Verte (3512m)


7月2日 晴れのち曇り




プティット・ヴェルト Petite Verte (以下PV)は独立峰ではなく、その背後にそびえるお姉さん格のエギュイーユ・ヴェルト Aiguille Verte(4121m) の前にちょこんと小さなピークを持つ妹分。
だがこのクラシック・ルートは登山を始めた人のひとつの登竜門とも言われています。ロープウェイで3233mのグラン・モンテまで行けて、そこからはその山頂が目に入る。少しデリケートな急斜面、シュルント越え、最後に登攀と、標高差250mのミックスルート。
そこからのヴェルト、ドリュの北壁は圧巻で、驚くべき眺めが待っています。

ノーマル・ルートとはいえ雪と氷の状態によっては注意が必要な、あなどれないルートです。


出発地点標高 グラン・モンテ Grands Montets 3295m
到着地点標高 プティット・エギュイーユ・ヴェルト Petite Aiguille Verte 3512m
標高差 登り 250m、下り 1500m 
所要時間 グラン・モンテ Grands Montets 〜 プティット・ヴェルト Petite Verte 1時間40分
プティット・ヴェルト 〜 ラ・クロワ・ドゥ・ロニャン la Croix de Lognan 3時間50分
道具 アイゼン、ピッケル、ハーネス、ヘルメット、ザイル30m、アイススクリュー、カラビナ類
念のためナッツとカム
地図 IGN 3630 OT







登山を始めて2年目、この山はミックス・ルートで距離もさほど長くはないのでいい訓練山行になるだろう。
この日は快晴だったがとても気温が低い。7月に入るもののアルプスではまだまだ夏とはいえない。しかも今日は少し風がある。

シャモニから行くとアルジャンティエールの町の手前にグラン・モンテ行ロープウェイ駅がある。
8時すぎに駅に到着。駅のパーキングにはこれからPVを登攀する人たちが車から装備をだして身支度をしていた。それを見ていたら快い緊張感とともにワクワクしてきた。

途中ラ・クロワ・ドゥ・ロニャン la Croix de Lognan で1回乗り換え、あとは一気に標高3233mのグラン・モンテ駅まで一上がれる。
駅から降りた途端・・・寒いっ !! 身を切るような寒さだ。駅から下に降りる鉄の欄干が真っ白で、もし素手で触ろうものならくっついて皮膚ごと剥がれそうだ。風も強い。
この駅はピークの上に建てられており、ここから一旦60mほど降りると平らなコルに出るので、ここでアイゼン装着、アンザイレンする。


アンザイレンするほかのパーティ
ザイルパートナー

昨日は気温が少し高めで氷壁が少し溶けたところに昨晩の気温低下、それに風により表面の雪が払われた為、斜面はツルツルのミラー状態だそうだ。慎重に登っていこうと話し合う。

実は昨日は曇天で小雨が降る中、ロープウェイとリフトを乗り継ぎアンデックス Indexまで行き、さらにそこから少し登った標高2500mあたりのけっこう急な斜面で滑落停止トレーニングをした。
仰向け、うつ伏せ、逆さ仰向け、逆さうつ伏せ、前転、そしてそれぞれピッケルを持っている場合と持ってない場合とあらゆる状況での防停止訓練した。滑っては登って滑ってはまた登ってと、アイゼン無しだったので登るのにも一苦労で大汗かいてきのだ。

そんな練習の成果を登攀中試す機会が無いことを願うのだが、目の前にどーんと迫る斜面は結構急で、否が応でも気が引き締まる。
この斜面を直登するのだが、本当にツルツルだった。1歩1歩アイゼンを蹴り込み、爪がしっかり氷に噛み付いた確信がないと次の1歩が踏み出せなかった。もし自分がスリップしたら止められるだろうか・・・パートナーがスリップしたら止められるか・・・足と共にピッケルを持つ手にも力が入った。。私は特に高所恐怖症でもないが、さすがに下を見ると髪の毛が逆立つような気分だったし、慎重になっているあまり寒さも感じなかった。
でも寒さを感じたのはデジカメで、このあと動作せずです(涙)
ここの斜面ではクレヴァスがあるので注意!
ベルクシュルント(上のタイトル下の写真だのほうが左右に大きく走っているのが分かる)が迫ってきたら肩を目指し右にトラバースする。


グラン・モンテからは山頂が見えます
この斜面がツルツル
ドリュの雄姿がすぐそば
その向こうにはモン・ブランが

シュルントは状態によっては崩れやすいので注意が必要。ここを乗り越えると山頂に続く尾根の付け根でもある小さな肩にでる。ここからはさらに少し急な尾根歩きになる。右手にはヴェルトからドリュに続く針峰尾根の薄くヴェールのような雲をまとった姿が見えている。とはいっても1歩1歩が慎重になっているので風景に気をとられている暇はなく、なんだか足元しか見ていない。
岩に突き当たるのでそこを巻くと登攀の取り付き点にあたる。ピッケルとアイゼンをここでデポしようか迷ったがとりあえずザックにくくり付けて持っていくことにする。壁を見上げて立ち止まると途端に寒さが骨の中にまで入り込んでくる。ここでもスリップしないようにとゆっくり進む。そのせいかかなり時間をかけてしまったように思えたが、100mほどだったろうか、ようやく山頂にでる。

山頂で思ったのは、雄大な展望に感動するのはもちろんだが、このピークがこれから先ヴェルトまで伸びているいくつものピークを持つ岩稜、グラン・モンテ稜のスタートである小ピークの一つにすぎないこと。
この尾根をヴェルト4121mまで登攀するなんて・・・コースタイム12時間・・・驚愕!
もちろん我等はここでUターン。

下りは同じルートを伝う。シュントからロープウェイ下までの斜面では、さすがに下り好きの私でも下がまともに見えるだけに少し足がすくんだ。
出発地点に戻ったのもつかの間、今度は駅から下にロニャン氷河を下り始める。


下山したらデジカメが作動、でも電池残量が点滅!
PVのピーク
ロニャン氷河(手前)と長いアルジャンティエール氷河が下で合流している

ロニャン氷河の下部はアルジャンティエール氷河と合流している。駅からココの辺りまで標高差で約700m。もちろん途中ヒドゥン・クレヴァスには注意する。まだこの時期はさほどクレヴァスは口を開けていなかった。ここの斜面は上部とは違いほどよい感じでアイゼンが刺さる。気温自体は上ほど低くないんだろうが、氷河を抜ける冷たい風が頬をさす。
ここからはロニャン氷河のモレーンの上に乗り、岩場をアルジャンティエール氷河と平行してロープウェイ途中駅へと降りていく。距離は4kmちょっとくらいだろうか。

なんといってもこのルートはロープウェイのおかげでとてもアクセスがいい。小屋泊なしで3000m級の山に日帰りできるんだから。でも小屋代もロープウェイ代もいっしょか。



 





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