槍ヶ岳 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
上高地〜横尾〜槍沢〜槍ヶ岳〜横尾〜上高地 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
10月4日〜5日 晴れのち曇りのち雨 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
その鉾先はひとり天を指し | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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槍ヶ岳を始めて見たのは昨年の夏、裏銀座を歩いた時だった。始めは穂先だけ見えたが、三俣山荘に着いたときは違った。山頂から左手に広がった北鎌尾根がなかなか標高を下げずに長々と伸びていた。夕日に照らされてオレンジ色で、まるでスポットライトを浴びたようで堂々としていた。それ以来、北アルプスが望める山に登るとすぐに槍の穂先を探した。今年はその槍を間近で見たくなった。 8月末に悪天のため、北鎌尾根を登攀するチャンスを逃してからは、登山ルートで歩いてみようと思った。予報では好天のこの週末に行くことにした。同行者はご近所の熊さん。 【1日目】 さすがに10月にも入ると早朝の上高地はひんやりしている。沢渡から乗ったバスやタクシーから降り立った時に感じるこの空気感は、フランスでパリから乗った夜行列車が早朝シャモニに着いて駅に降り立った時に感じるそれと似ている。山の空気だ。空は久しぶりに見る青で、雲もなく澄んでいる。早速横尾に向けて歩き出す。 紅葉シーズン真っ盛りということもあり人は多い。明神館まで来ると目の前には明神岳が昇ってきた朝日で輝いている。徳沢までの単調な道も天気がいいと足取りが軽くなる。徳沢では更に人が増えている。横尾にいたっては人があふれてる。しばらく休憩して周りを見ていると、必ずといっていいほど全員が吸い込まれるように橋を渡って涸沢に向かっている。紅葉が目当てなのだ。 それを横目に我々は槍沢方面に向かう道に入る。横尾の喧騒がうそみたいに静かで、誰も歩いていない。やはり山は静寂がいい。一の俣、二の俣と過ぎ、沢脇を気持ちよく歩いていくと槍沢ロッジが見えてきた。 ここでハプニング。後からだいぶ遅れてきた熊さんがバテテしまい、槍岳山荘にテントを張る予定だったが行けそうにない。槍沢でテントを張ることにした。こんな晴天の時に肩まで行ければ360度の展望だったろう。明日に期待しよう。 |
天気がいいと横尾までの長い道も 苦にならない |
明神岳がくっきり |
横尾は人で一杯 |
一つ目の橋、緑がキラキラ |
2つ目の橋 |
沢の脇を通って |
途中水場があり喉を潤して |
槍沢ロッジ到着 |
槍沢のテント場に向かう途中、槍の穂先がかすかに見えた |
晴天のもと、テントを張ってのんびり。明日朝は3時か4時頃出発して槍の穂先で朝日を見たい、と主張するも、暗い中をヘッドライトで歩くのは危険だと却下される。慣れてるんだけどな。 【2日目】 もともと特に山で食べる食事にこだわっていない私は、朝食に暖かいものが食べたいとか消化のいいものを食べたいとかいった好みはない(でも人が作ってくれれば喜んで食べるのだ)。だから今までアルプスを歩いていたときも半分シュラフに体を入れたまま寝ぼけ眼でパンをかじっていたこともある。ということでこの日の朝も持っていたパンをかじって早々に出発。といってももうすでに5時半、辺りは白々している。天気はどうやら雲が少しでているが天気は悪くなさそうだ。 しばらくはほとんど平らといっていいほどの槍沢沿いの道を進む。次第に木々が低くなり、目の前に天狗原やツバメ岩が見えてきた。いよいよ登りに入る。この時期北アに来ていて涸沢の最盛の紅葉を見ないのは、何となく寿司屋に入って寿司を食べずにいるような感じがしていたが、なかなかどうして、こちらの紅葉も目を楽しませてくれる。 |
晴天が期待できそうな朝焼け |
こちらの紅葉もなかなか |
天狗原の分岐を過ぎるとしばらくして道は石だけになる。槍の穂先が突然見えたときは驚いた。この驚いた、というのは、やっとお会いできましたか、とか、これが夢にまで見た、とかいうものではなく、こんな小さな穂先が遥か彼方から望めてそれが槍と認識できるとは!といった驚きなのだ。驚いたまま口をポカンと開け登っていると、槍ヶ岳開山の祖である播隆上人が篭られたという播隆窟に達した。中は思ったり広く深く、雨をしのぐには十分に思える。にしても古の人の体力精神力にはいつも感動させられる。 |
荒涼とした中に槍が見えてきた |
播隆窟の中は意外と広い | だんだん近づいてくる | 殺生ヒュッテが下になる 遠方に常念 |
見上げればどんどん穂先が近づいてくる。右手には殺生ヒュッテとヒュッテ大槍、正面には槍岳山荘が肩に乗っかっている。ザレた感じのジグザグ道を20分くらい登れば肩だ。残念なことにあんなに青かった空が不機嫌なような灰色に変わってしまった。 8時30分、槍岳山荘に到着。まさしく槍とは目と鼻の先で、山頂に向かっている登山者も良く見える。ここで熊さんをひと時待つ。風が強く気温も下がっている。サブザックの中に防寒着とフリースの帽子を入れてきてよかった。 いよいよ山頂に取り付く。遠目で見たとおり、岩がごつごつしているので登りやすい。梯子を上り切って山頂に出た。視界が一気に360度開けた。 |
山荘からは目の前に槍がそびえる | |
上りと下りではルートが違うので捨て違わずにすむ 梯子がいくつかかかっており、高度感がある |
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山荘と背後には堂々とした笠ヶ岳 | |
天気はどんよりしていたが、それでも遥か富士山や八ヶ岳、御岳の方まで見渡せる展望がいい、槍沢まで落ちている高度感がいい、そして長く鋭く伸びている北鎌尾根がいい。グレーの空にビュービュー唸る風の中で山頂に私がたった一人なのもいい。 他の山に登っているどれだけの登山者が槍のこの穂先をみているのだろう。20分ほどして熊さんも到着。 |
黒部五郎、薬師、立山方面 |
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穂高方面 | ||
常念、蝶方面、東鎌尾根に大槍ヒュッテが見える | ||
北鎌尾根が延びている |
充分展望を満喫して槍岳山荘に下りる。楽しみにしていたアレが・・・なかった。 |
仕方なく暖かいココアを飲んで槍沢のテント場 に下り始める。 天狗原の辺りの紅葉が綺麗だ。特にナナカマドが 赤い。一気にテント場まで下り、とりあえず片付け られるものは片付けて熊さんを待つ。 とうとう雨が降り出してきた。 |
雨の中を横尾から上高地までの道のりは長く感じる。下を向いて黙々と歩くしかないから余計そう感じる。昨日はあんなに輝いていた山も雲がかかり山頂までは見えない。 上高地のゲートは7時に閉まるというので一足先に上高地に下り、タクシーを確保して熊さんを待つ。6時50分、すっかり日が落ちて暗くなった上高地を後にした。 きっと登山を始めた人は誰もが槍に登ってみたいと思うのだろう。北アルプスには登り応えのある山、登山途中の景色がいい山、色々な山が連立している。だからこの山が「いい山」かどうかは個人個人によって違うだろうが、どこからでも認め得るこの颯爽としたキリリと天をむいている穂先に立つのも、いいと思う。 |
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