オート・ルート シャモニ‐ツェルマット
La Haute Route Chamonix-Zermatt



4日目 8月31日

ヴィネット小屋 Cab. des Vignettes 〜 ベルトル小屋 Cab. de Bertol


晴れ


出発地点 ヴィネット小屋 Cabane des Vignettes 3160m
到着地点 ベルトル小屋 Cabane de Bertol 3311m
標高差 下り860m、 登り計1026m
所要時間 9時間40分(2時間強の昼食と休憩を含む)
地図 スイス連邦地理院1347








5時30分に起床し例のトイレに行く。とどうだろう、昨日登ってきた方面を見ると見事な朝焼けが望めた。今日から3日間は好天だという。オート・ルートの中でも指折りの展望をを見せてくれる後半が天気に恵まれるとはついている。今のところ空には雲ひとつ無い。
天気が良いのであれば特段急いで出発する必要も無く、ゆっくりと朝食を取り、7時20分に出発する。

今日のルートは、先ず昨日登ったコルを折り返して再びオテマ氷河に出て、モン・コロン氷河に入りさらに登ってエヴェックのコル 3382m に向かう。ここからモン・コロン M. Collon 3636m を巻くようにアロラ氷河を下ってしばらくモレーンを歩く。ここまではヴィネット小屋からぐるっと円を書く様に歩いて小屋の断崖の下に出てくるような格好だ。そこからベルトル小屋まで約800mを登っていく。
ヴィネット小屋手前からベルトル小屋は肉眼でも望めて、直線距離では近くいが谷に挟まれているため、氷河に回りを囲まれたモン・コロンを巻いて行くことになる。時計の針の「2」と「10」の位置のようだ。

私達よりも早くスイス人グループが出発した。小屋の背後にそびえているピィニュ・ダロラ Pigne d'Arolla 3790m の山頂が朝陽を浴びて輝きだした。

朝焼けに気持ちが弾む
ヴィネット小屋とピィニュ・ダロラ 3790m
左ちょっと下に出発したスイス人グループが見える

小屋の回りも凍り付いているので出発時からアイゼンを履く。小屋から続く尾根道を慎重に進み、オテマ氷河までは昨日のルートの逆を行く。オテマ氷河を横断し、左手に進むと前方にエヴェックのコルが見えるのでそこを目指す。
快晴なので360度の展望が望める気持ちの良い登りだ。おととい降った雪のせいで本来ならラッセルを強いられるところだが、先行するスイス人グループの先頭のガイドはスノーシューを履いており、以下10名が踏んで行ってくれるので私たちは登りやすい。右手にプチ・モン・コロンを見上げ、左手にはヴァリス山群を遠くまで眺め、たまに振り向いてヴィネット小屋に別れを告げながら、景色を堪能できる登りだ。これもスイス人たちのトレースのお陰だ。コルの右手には通称「クジラ」と呼ばれるこんもり雪をかぶったピークが見える。その左がエヴェックのコルだ。斜面が急になったせいか、前方のスイス人グループが時々止まる。そうすると後続の私たちも、その後ろのフランス人グループも止まる。それはコルまで続き最後まで彼らのトレースをお借りした。感謝、感謝。

小屋からの尾根道
太陽の陽はまだここまで届かない
再びオテマ氷河上に出る
昨日はこの氷河を下から登ったっけ
今日は横断するのみ
後方のフランス人グループ
さらに後ろにはヴィネット小屋が見える
左上方のエヴェックのコル 3382m とポコンとした「クジラ」が見える
前方を行くスイス人グループ
確かに「クジラ」に見える

コルに着いたら思いもかけない展望が待っていた。昨日雲の合間からちょっと顔を出してくれたグラン・コンバンとその左奥にモン・ブランが見える。この景色に3グループとも立ち止まって眺め入っている。スイス人グループにトレースのお礼を言いつつ話していると、彼らはこれからイタリア側にぬけるという。確かにエヴェックのコルはスイスとイタリアの国境上にある。
正面には明日コンディションが良ければ登る予定のテット・ブランシュ Tête Blanche 3710m の山頂が少し見えている。山また山の360度の展望は壮観だ。
晴天のため気温が上がってきて汗ばむくらいだ。充分に水分補給をして、フランス人グループに少し遅れて出発。モン・コロンを巻くようにアロラ氷河を下っていく。

左にモン・ブラン 4808m と右にグラン・コンバン 4314m
エヴェックのコルで休憩するスイス人グループ
背後はレヴェック 3716m
右から3つ目の小さなピークが明日登る予定のテット・ブランシュ 3710m
紺碧の青空に山がそそり立っている

気温が上がり氷河上の雪がだんだん溶けてきた。時折クレヴァスが口を開いているがそれほど多くは無い。2700m位でモレーンが見えてくるので左側を歩き、モレーンが20m位の高さになったところで今度はそれを乗り越えて右岸に出る。次第に氷河に押し出された石や岩が多くなり、氷河の先端に来たことが分かる。氷河を源流にした川が流れているので、その川に沿って下っていく。途中にブリトル小屋への分岐点があるので右に折れる。左手にはモン・コロンが鎮座しており、その右には見事な氷河が落ちている。そして今日の出発点のピィニュ・ダロラとヴィネット小屋のある断崖が見える。モン・コロンを巻いて一周してきたのだ。
ちょうどいい草地帯があったので昼食にする。

クレヴァスに注意
左のモン・コロンを左に巻いて下る
アロラ氷河の先端
モン・コロン 3636m
この山の周りをぐるっと一周したのだ
再び今朝の出発点、ピィニュ・ダロラが見えてきた
左はモン・コロン
少し上がったところからアロラ氷河の先端を
眺める
ここで昼食を取った
右がピィニュ・ダロラ
左の氷河の上部が昨日登ってきたオテマ氷河の終わり

昼食を取って、ポカポカ天気の中靴を脱いでゴロンと横になるひと時が本当に気持ちよかった。さて、これから約800m登りが待っている。見上げたベルトル小屋はアルプスのどの山小屋にも負けず劣らず急峻な岩の上に建っていた。

小屋がだんだん近づいてくる
雪はあるがアイゼンだけ付けてアンザイレンはしない
後は岩場を残すだけ
登ってきたトレース
小屋直下のかなり急なはしごと階段

約2時間の登りの後、17時ベルトル小屋着。小屋は360度の展望だ。特に食堂は全て回りを窓に囲まれており、しかもこの小屋が岩場の肩に乗っているため回りを遮るものが無くまるで飛行機に乗っているようだ。何といってもこの小屋の標高は3311mだから高度感があるのは当たり前だ。この絶景を見ながらテラスでホット・ワインを飲むこの風景が待っていてくれるから山はやめられない。

南方面 : テット・ブランシュ 3707m
東方面 : 右にダン・デラン4171m と 左にマッターホルンの頭
北東方面 : モン・ミネ 3214m
西方面 : ピィニュ・ダロラ 3772m
南西方面 : プラン 3374m
小屋のテラス
もうじき夕焼けショーが始まる


小屋の管理人さんはとても親切で、明日用にリコラ(スイスの有名な植物ティ)を作ってくれるという。私は水のペットボトルを買って、その中の水を自分の水筒に空けてそこに入れてもらった。
食事もおいしくポテトグラタンはみんなお代わりをしていた。オート・ルート上はなかなか良い小屋揃いだ。


マッターホルンの頭が見えた時、終点のツェルマットが近いことを実感し少し寂しくなる。もう2日後にはツェルマットの町に下りるんだった。疲れはまったく無く、まだまだ歩けそうなのに。残り2日、山の中にいる喜びをかみしめながら歩こう。



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