オート・ルート シャモニ‐ツェルマット
La Haute Route Chamonix-Zermatt



3日目 8月30日

シャンリオン小屋 Cab. de Chanrion 〜 ヴィネット小屋 Cab. des Vignettes


曇り


出発地点 シャンリオン小屋 Cabane de Chanrion 2462m
到着地点 ヴィネット小屋 Cabane des Vignettes 3160m
標高差 700m
所要時間 7時間30分
地図 スイス連邦地理院1346, 1347









おいしい夕食を食べ、心地よい疲労感と暖かい布団でゆっくり眠れるはずだった・・・のに、同じ部屋で大音量で鼾をかく輩がいた。私の感じでは100デシベルは優に超えてるブルドーザー並のうるささだ。さすがのステフも溜まりかねて「シー」とか「止め!」とか叫んでいたが効果なく、あきらめてザックから耳栓を取り出し寝てしまった。大抵のフランス人は山小屋では耳栓をして寝ている。私は耳の圧迫感がいやで余計に眠れないので使ったことは無い。でもこの晩だけは持ってこなかったことをかなり後悔した。
朝になり誰が鼾をかいていたのかそっちの方向を見てみると、なんと昨晩夕食の席が一緒になった、同じシャモニ-ツェルマットを歩いているフランス人グループの1人だった。この後ツェルマットまで全ての山小屋で同泊なのに・・・

6時45分起床、7時に朝食、小屋の管理人さんに天気とルートをよく確認し8時20分出発。
今日は長い氷河歩きが待っている。

昨日の窓からの景色
雪が降りました

昨晩雪が降ったようで、外のは寒々とした景色に変わっていた。小屋から伸びている道を下っていくと小さなダムに突き当たる。このダムはこれから登るオテマ氷河から流れてくる川を堰き止めており、このダムの脇から川沿いに伸びている細いガレ場の道を上流(氷河の先端)に向かって進んでいく。この入り口さえ分かれば、あとは青いペンキやケルンがおいてあるのそれらを伝って歩く。30分ほどなだらかな登りを進んでいくと、氷河の先端とその下にできた小さな湖が見えてくる。左側を回り込んで氷河の先端に達する。ここは石と砂でぐずぐずしているので、湖に落ちないように注意。
オテマ氷河に取り付けたらアイゼンを履きアンザイレンする。

シャンリオン小屋
はためく赤いスイス国旗が印象的だった
写真中央のシャンリオン小屋から下ってきたところ
オテマ氷河の先端が見えてきた
氷河先端から歩いてきた方を振り返る

オテマ氷河は50000分の1の地図で見ても長く、6km以上はありそうだ。傾斜が緩やかなのでクレヴァスの心配はほとんど無く、じわじわと登っていく。幅は600〜700m位だろうか、両脇に3400、500m峰が連なっている。落石も考えて真ん中を歩く。氷河をしばらく歩き出した頃から風が強くなり青空が顔を見せ始めた。両脇を山に囲まれた氷河は冷たい風の通り道で肌を突き刺すようだ。しっかりと顔を覆っていても風は隙間から入り込んでくる。右側の各山々では山頂でまたそれぞれの氷河が形成され、それらがこちらに向かって落ち込んでいる。こんなに豊富に見える氷河もここ最近の温暖化でやはり後退しているのだろうか。

振り返ると正面に雲の合間からグラン・コンバン4314m が見える。やはり4000m峰になるとボリュームも高さも格段に違う。この山が確かスイスで最も西にある4000m峰だったはず。
いたって単調な登りが続く。が標高が上がったせいか途中から昨晩の積雪で30cmほどのラッセルとなる。斜面が緩やかなのが救いだ。とはいえじわじわとアッパーブロウのようにこたえてくる。特に休憩できるような場所もないし風も強いので、立ったまま手早く昼食を取る。
再び交代でラッセルに入る。氷河を上り詰めていくと正面にプチ・モン・コロン 3555m が見えるのでこれを左にルートをとる。しばらくすると氷河は終わり切れ落ちた断崖の向こうに山々が見えてくる。その左手のコルを越えればもうすぐ目指すヴィネット小屋だ。

氷河先端を少し登り振り返ったところ
少しずつ青空が見え始める
グラン・コンバン 4314m が正面に姿を現す
両側にそびえる山々
別の氷河がオテマ氷河に流れ込む
オテマ氷河の終わり
この先は切れ落ちている
左手に見えるコルを越える

このコルの下に達したときに、上からガイドを連れた年配のグループが降りてきた。10人位はいただろうか。この時間にどこへ向かうのか聞いたところ、早く小屋に着いたのでちょっと歩いてくる、とのこと。さすが山岳民族スイスの老人は足腰が強い。私も年取ってもあんな風に山歩きを楽しみたいものだ。こちらはお陰で急斜の登りをラッセルせずに済んだ。彼らには明日も助けてもらうことになるのだが。
ここを上りきり左手に進むとヴィネット小屋が見えてくる。


あまりの絶景にしばし言葉無く眺め入ってしまった。どうやってあの小屋まで行くの??そうだ、先ほどのスイス人グループのトレースがあるではないか。トレースにしたがって歩いていくと、左に巻きながらこの断崖の尾根の反対側に回りこんで小屋に達するようだ。こちらはオート・ルート山スキーの人たちが登ってくるルートにもなっている。もちろん今は夏でスキーヤーはいないが、この反対側も雪の急斜面で足を滑らす訳にはいかない通り道だった。
ヴィネット小屋着、16時。

管理人さんに聞いてみると今夜の宿泊客は先ほどのスイス人グループと昨晩一緒になったフランス人3人グループ、そして私達だけだった。フランス人グループの1人の鼾の話をして懇願して別のドミトリーにしてもらった。お陰でこの晩はぐっすり眠れたのだった。
氷河上ではトレースが見当たらなかったのだがフランス人グループは先に到着していた。早速食堂で暖かい紅茶を頼むと体が生き返ってきた。

明日宿泊予定のベルトル小屋がヴィネット小屋の肩越しに見えている
食堂の様子
ドミトリーは私達だけだったのでぐっすり眠れた
トイレまでの道は凍っていて滑る滑る、
夜中には絶対に行きたくない場所だ

小屋には水の供給がないので手を洗うにも外に出て雪で洗うか持参した水で洗う。そのため飲み水は小屋でペットボトルを購入することになる(確か500mlで5ユーロ位だった)。
この小屋は道具を置く棚がたくさんあったり、布団が気持ちよかったり、食事もおいしく、快適でまた来たくなる小屋だった、そんなに頻繁にトイレに行けない小屋ではあるが・・・




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