オート・ルート シャモニ‐ツェルマット
La Haute Route Chamonix-Zermatt
5日目 9月1日
ベルトル小屋 Cab. de Bertol 〜 ショーンビエル小屋 Schönbielhütte
晴れ
出発地点 | ベルトル小屋 Cabane de Bertol 3311m |
到着地点 | ショーンビエル小屋 Schönbielhütte 2694m |
標高差 | 下り1187m、 登り計613m |
所要時間 | 9時間(約1時間半の昼食と休憩を含む) |
地図 | スイス連邦地理院1347 |
5時に起床し、5時15分朝食、6時には出発する。 今日の行程は先ずモン・ミネ氷河からテット・ブランシュのコルに出て、そこからテット・ブランシュ 3710m に登る。そしてクレヴァスの多いストックジ氷河を下りストックジ 3096m を回り込んでさらに別の氷河ショーンビエルを登り、マッターホルン西壁の前に位置するショーンビエル小屋に達する。 ベルトル小屋から降りた岩場の影にアイゼンとピッケルをデポしておいたので回収する。岩場を降りたすぐ横がベルトルのコルだ。コルから見上げた小屋は岩の肩にバランスを取りながらちょこんと乗っかっているように見える。よくこんなところに建てたものだと思うような山小屋がアルプスには多い。コルを超えてすぐモン・ミネ氷河上にでる。このコルから次に向かうテット・ブランシュのコルまでは、今日のように晴れていれば何の問題もないが、ガスっていて視界が利かないときはルートを見失う可能性があるので注意が必要だ。今日はまったくそんな心配がないほど空は雲ひとつなく青い。四方八方を山、また山に囲まれ、周りの景色を楽しみながらの快適な氷河歩きだ。少し雪が深いが苦労するほどでもない。 テット・ブランシュのコルに着いたとたん、マッターホルンが大きく立ちはだかるように目の前に全体像を現す。このコルからテット・ブランシュ山頂は見えないが、岩場はないのでコルに荷物をデポして山頂までピストンすることにする。テット・ブランシュ 3710m 着9時40分。 |
岩の肩に乗っかっているベルトル小屋 | |
マッターホルンの頭が三角にちょこと見える 右のダン・ドゥ・ベルトルを左から巻いていく |
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陽が当たり始める | |
ブクタン 3779m | |
今日も空は紺碧 | |
テット・ブランシュのコルに向かう | |
テット・ブランシュ山頂 |
山頂からは遠くモン・ブラン、イタリアのグラン・パラディが望める。そして目の前にはマッターホルンとダン・ディラン、そしてダン・ブランシュ。このあたりはダン・〜やテット・〜が多い。モンは「山」の意味というのは知られているが、ダンは「歯」、テットは「頭」。フランスではエギュイーユ「針、針峰」が多いが、スイスではダンの方をよく聞く。 昨日まで遠くに頭しか見えなかったマッターホルンが今日は姿全体、しかも南に突き出た肩までよく見える。これからあの麓まで降りて行くのだ。グラン・パラディは白くこんもりしておりすぐ分かる。あそこの頂に立ったのはもう4年前だ。いつまでも見飽きることのないパノラマが快晴の空の下に広がる。随分と山頂に長居をしてしまったが、下りに入るとしよう。 |
山頂のケルン | |
マッターホルン | |
マッターホルンとダン・ディラン 共に4000m峰 |
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遠く白く雪をかぶるグラン・パラディ | |
モン・ブランが見える | |
美しいピラミッド型のダン・ブランシュ |
ザックを回収し下りはじめる。ストックジ氷河は大きく口を開いたクレヴァスが多く、慎重にかつ迅速に、ルートをよく判断しなければならない。緊張して1歩1歩を重ねていく。途中斜面が急でかつブリッジを疑う箇所があったのでそこだけはアイススクリューを打ち込んで確保して降りた。ようやくクレヴァス地帯を脱すると、氷河の真ん中にストックジの小山が迫ってくる。ストックジの左側に氷河は流れ落ちるが、斜面が急すぎて降りることはできない。ここはストックジに一旦上がり、右側から回り込む。クレヴァスを注意しながら足元ばかりを見て歩いていたが、ふと見上げるとマッターホルンの西壁がもう目の前だ。ストックジの岩場で昼食にする。 |
クレヴァスが至る所ある | |
否が応でも慎重になる オート・ルート中最も注意が必要な氷河 |
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下にショーンビエル小屋が見えてきた | |
中央上にちょこっと見えているのがテット・ブランシュ | |
ストックジを右から巻いてる道 テット・ブランシュ方面を振り返ったところ |
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マッターホルン西壁が迫る 角度によって随分形が違う |
ストックジの岩場は注意しないと危険な箇所が随分ある。こういう岩場では大きなザックが本当に邪魔になる。私もザックが岩に引っかかりヒヤッとした時があった。道はもちろんないが、かなり下って岩場がザレ場になったあたりから細い道が見え始める。その道はモレーンまで続き、ショーンビエル氷河に阻まれ終わるので、今度はその氷河を北に向かって登り返す。表面は氷で、割りとツルツルしているのでしっかりとアイゼンを効かせないと滑るかもしれない。気温が上がったのと少々の疲れとで、登るペースが落ちる。しばらく登ったら右に折れ、氷河を離れて岩場を登る。岩場はところどころ赤いペンキで印がついているのでそれを伝って歩く。小屋はもうそんなに遠くないはずだ。 |
最後の登り、ショーンビエル氷河を行く この氷河の真ん中あたりまで登り右に折れ岩場を上がる |
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ショーンビエル小屋が見えてきた | |
ショーンビエル小屋 | |
テット・ブランシュ方面を振り返る テット・ブランシュは右上のポコッとした雪山 中央には巻いたストックジが軍艦のように横たわっている |
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ショーンビエル小屋とマッターホルン |
小屋着3時。 やっと着いた。ここが最後の小屋泊だ。先ずは絶景のテラスでビールを飲む。1杯、2杯・・・。明日はツェルマットの町へ登山道を下るだけ、2日酔いだろうが寝不足だろうが雨が降ったって雪になったって5日間お風呂に入ってなくたって何の心配もない。無事に歩けたことと、終わってしまうことの寂しさを語りながら山々を眺めていた。 |
ドミトリーの窓から見えるマッターホルン | |
夕焼け | |
マッターホルンの裾野の向こうにモンテ・ローザが見える モンテ・ローザにマッターホルンの影が映る |
小屋はツェルマットの町からハイキングがてら来れることもあり込んでいた。 ここでも夕陽で赤く染まった山々をカメラに収めようとみんながテラスに集まっている。私もマッターホルンだけでも10枚くらいは撮っただろうか。日本人に海外で一番好きな山、見に行きたい山を聞いたらおそらく1位はマッターホルンだろう。登山をしない人でも大勢の観光客がツェルマットの町にこの山を見にやってくる。マッターホルンも独立峰で、ツェルマットから見た北東側の形のよさなど富士山と似ている。だから日本人はマッターホルンが好きなのだ、と思う。 ここ2日の晴天のおかげで随分陽に焼けてしまった。それでもその天気のおかげでこんなに素晴らしい展望に恵まれたのだから仕方ないだろう。月明かりで黒いシルエットになったマッターホルンをいつまでも眺めていた。 |
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